「みなし残業時間」の求人を応募する方に知っておいてほしい事

転職活動をしている方ならば、転職エージェント、転職サイトやハローワークなどで色々な求人を目にする機会も多いと思います。

その際、求人票の「賃金欄」で以下のような表記を見かけたことがあるかもしれません。

  • みなし残業時間25時間分を含む
  • 固定残業代40時間分を含む

※「みなし」「固定」はほぼ同義です。

通常、労基法上の管理監督者や裁量労働制、そして年俸制などの適用対象ではない主に若手の方の場合、まず基本給や各種手当があり、それに加えて残業した時間分だけ時間外労働手当や深夜残業手当などが支払われますよね?

一方で、「みなし残業制」や「固定残業制」は予め想定される残業代を先に一定額支払っておく事で、

  • 残業代をあらかじめ上乗せする事で、求人票上の賃金表示を一見高く見せる事ができる。
  • (残業代は一応払った事にしつつ)できれば人件費の削減につなげたい。
  • 人件費の管理を容易にしたい。

おそらく上記のような企業側の意図に基づいた制度です。

みなし残業という制度自体は(正しい運用がされていれば)違法なものではありませんが、幾つか留意しておいた方が良い点もあります。

今回はこの「みなし残業時間が出てきた時の留意点」ついて、元人事部で採用や労務も担当していた自身の経験もふまえて書きたいと思います。

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みなし残業時間≦実際の残業時間??

私自身も以前「固定残業代」を採用している会社2社で働いたことがあります。

うち1社は「みなし(固定)残業時間30時間を含む」の会社。

そしてもう1社は「みなし(固定)残業代60時間を含む」の会社です。

両者で共通していたことは、

両社とも入社後の実際の残業時間は、みなし残業で書かれていた残業時間とほぼ同じだった。

という事です。

つまり、みなし残業30時間の会社では実際の残業時間は月平均で30時間程であり、みなし残業60時間の会社では実際の残業時間は月平均60時間ぐらいだったという事です。

また、知人が「みなし残業時間80時間」の会社で働いていましたが、話に聞いたところ実際の残業時間はそれ以上だったとの事です。

みなし(固定)残業時間制の場合、例えば「みなし残業30時間」ならば、実際の残業時間が30時間に達しなかった場合(例えば15時間だったとか)でも減額されることはありません

あたかもこれがみなし残業代のメリットのように話す人に出会ったことがありますが、私の経験上は実際の残業時間がみなし残業時間を上回る事はあっても下回ることはあまりないように思います。

(毎回みなし残業時間を下回るようでは、固定残業代を導入する企業側にメリットがありません。)

これはあくまで私の経験の範囲内での話ですので、あくまで参考程度にしていただきたいですが、転職の求人票でみなし残業時間を検討する際は、

みなし残業時間≦実際の残業時間

ぐらいに考えておくのが無難だと思います。

みなし残業時間のあいまい表記に注意!

ある求人票を見ていて以下のような記載を見つけました。

  • 基本給26万円(みなし残業手当40時間分を含む)

これ、意味わかりますか?

つまり、みなし残業時間が40時間分あることは分かりますが、「この総額26万円のうち、いくらが40時間分の残業に相当するのか?」がこれだとはっきりわかりませんよね。

極端な話ですが、実際は基本給部分がかなり低く抑えられており、1時間あたりの残業単価が都道府県の最低賃金を下回るほど低かったといった可能性もゼロではありません。

また賞与や深夜残業代などの支給の際には、みなし残業部分を除いた基本給部分のみが計算の基礎になることも多く、結果的にこれらの支給額が思っていたよりずっと低かったといったこともありえます。

みなし(固定)残業制を採用する場合に、事業主が求人票に記載すべき内容については以下の通りです。

固定残業代を採用する場合は、募集要項や求人票などに次の①~③の内容全てを明示してください。

①固定残業代を除いた基本給の額

②固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法

③固定残業時間を超える時間外労働及び深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

引用元:厚生労働省ホームページ内「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針(平成27年厚生労働省告示第406号)」第二の一(一)ハ(ハ)に基づくリーフレット。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000097679.html内のPDFファイル

なお、引用したリーフレットはこちら(PDFファイルが開きます)。

これを元に先ほどの例を書くと以下のようになります。

正しい表記
  • 基本給26万円
  • みなし残業手当(時間外労働の有無に関わらず40時間分の時間外手当として〇万円を支給
  • 40時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給

最近はみなし(固定)残業等に対する行政の指導もだいぶ強化されてきているので、こうした曖昧な表記は減ってきているとは思うものの、実態としてはどうなのでしょうか?

みなし時間を超えた部分はもらえるのか?

次に、以前私が働いたみなし残業の2社で対応が異なった点についてです。

それは、実際の残業時間がみなし時間を超えた分、つまり「超過部分の支給の有無」です。

片方では、超過部分をきちんと計算して支給がありましたが、もう片方では、超えた部分の追加支給はありませんでした(だいぶ前の話なので今はどうかわかりませんが)。なお、超過部分を支給しないのは違法です

しかし、実態としてこの超過部分の支給を行っていない会社はいまだに多く存在するものと思われます。そこでまず求人票を見る際に、

チェック
  • 〇時間を超える時間外労働分についての割増し賃金は追加で支給

先ほどの引用「正しい明示事項の③」でも触れましたが、この記載があるかは最低限確認しましょう。

そして逆に「〇時間を超えなかった場合でもきちんと固定残業代は無条件で支給されるか?」も念のため事前に確認しておいた方がベターだと思います。

おわりに

転職関係の求人を色々見ていると、やはり企業にとって都合が良いのか、みなし(固定)残業制を採用している求人は結構な割合で見かけるように思います。

こうした求人はできれば避けたいと感じる方もいると思う一方、選り好みできない方も当然いると思います。

繰り返しになりますが、みなし残業の求人に関しては今回記事にした点を中心に留意しつつ、求人票の記載内容をチェックするようにしましょう。

そして、できれば面接などで実際の運用実態も確認して、後で後悔のないようにしましょう!

今回は以上です。最後まで読んで頂きありがとうございました。

本記事に関連する法令、規則、最低賃金等は頻繁に改正される場合がありますので、最新の改正情報を必ずご確認下さい。