【転職】あなたの内定先「名ばかり管理職」の可能性は?

キャリアアップを志向する方にとって、管理職になることは一つの到達点ですよね。一つの会社でそれを目指す人もいれば、転職でキャリアアップを通じてそれを目指す人もいます。転職活動を経て見事内定し、

転職活動中Aさん
転職活動中Aさん

前の会社では平社員だったのに、いきなり管理職で採用されました!

こんな事があったら普通に考えたらチャンスですよね?「転職成功」と考えるのが普通でしょう。でもちょっと待ってください。

ベテラン人事
ベテラン人事

会社によって「管理職」の意味するところが違っていたりもするので、表面的なイメージだけで捉えてしまうのはアブナイですよ?

ということで今回は、注意を要するケースの一つとして「名ばかり管理職」についてご紹介します。

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事例)同じ部署に管理職が何人も!?

これはある企業に採用が決まった方の事例です。

採用時の雇用契約書の職位欄には「課長職」と書いてありました。管理職のため、当然時間外割増手当(残業代)は出ないとの事。

そして実際に入社してみると、驚いたことに同じ部署に同じ職位の課長が何人もいます

”課長”という以上、一般的には通常何人か部下がいてそれを取りまとめているイメージかと思いますが、ここでは部下もおりません。

この企業では、課長職それぞれが一担当として個人で仕事しており、それを各部門の部長又は部次長に報告する形を取っていました。

  • この企業における課長は基本的に人のマネジメントは行わない。
  • 「部」は存在するが「課」が存在しない。

ここでいわゆる部下を持って評価などといったピープルマネジメントを行うのは部次長以上です。

本記事冒頭の「平社員だったのになんと管理職で採用された!」と一瞬喜んだ方、もしこれが今述べた名ばかりの課長だったとしたら?

もちろん名刺上は課長(〇〇部 課長 氏名)ですので対外的な箔は尽きますが、実際に社内でやっていることは部下も持たず、何の権限もない担当者と同じ仕事。これでは転職前と一緒ですよね?

当然企業側の解釈としては管理職です。管理職である以上、幾ら残業しても当然残業代はつかないので、ある意味都合よく使われているとも言えるかもしれません。

仮にこの方が内定した時に一般的な(マネジメントを行う)課長のイメージで入社を決めたとしたら?やりたいことは出来ませんし、がっかりですよね。。

この事例は、次で説明する「名ばかり管理職」に該当する可能性があるかもしれません。

「名ばかり管理職」とは?

ところで「名ばかり管理職」という言葉を聞いたことはありますか?

有名なものの一つとして、2008年に「マクドナルドの店長職が労働基準法第41条2号に規定する管理監督者かどうか?」が争われた訴訟がありました。

ご承知の通り、労基法41条により管理監督者に該当する場合、労働時間、休憩、休日に関する規定の適用外となります。

つまり労基法の管理職の要件に該当するならば、残業代(深夜除く)等は支払わなくても良いという事です。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第 四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一  別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

詳細は割愛しますが、飲食店側では「店長職は労基法上の管理職である」として残業代を支払っていませんでした。

そして結局、訴訟を起こした店長側に過去の割増賃金、休日出勤手当の支給などが命じられたというものです(当該訴訟の詳細はこちら)。

このように、労基法41条2号に規定する管理監督者の要件を満たしていないにも関わらず、企業側がこの規定を自社に都合よく解釈して、自社の社員に適用しているのがいわゆる「名ばかり管理職」です。

こういった訴訟は他にも幾つも起きており、飲食店に限った話ではありません。

こうした背景から、この「名ばかり管理職」の問題がクローズアップされるようになりました。

先述の”労基法上の管理監督者”と見なされるかのポイントについては概ね以下の通りです。

  • 部署、部門を統括管理しているか?
    →例(人事権、採用権、決裁権等をきちんと持っているか?)
  • 企業経営に関与しているか?
    →例(トップダウンで何ら決定権がない。又は担当者レベルの職務内容等ではNG?)
  • 充分な待遇か?
    →例(少額の管理職手当、部下よりも少ない収入等ではNG?)
  • 出勤時間等の裁量はあるか?
    →例(勤怠管理されており、遅刻した分給与を減額されているようならNG?)

これらを全て満たしていることが求められます。

参考:「管理監督者の範囲の適正化について」(厚労省WEBサイトへリンク)

「じゃあ管理職手当が幾らならOKなの?」といった部分は個別具体的な判断となりますが、一般的にこれらの要求水準は実際かなり厳しめです。

自社の管理職扱いの社員全てに対して、この要件を十分に満たしている会社が一体どのぐらいあるでしょうか?

例えば、部下が少し残業しただけで収入が逆転してしまう管理職がいるとか、業務上の決定権限がほとんどなく実質的には担当者と同レベルの仕事しかしていないケースなど、皆さんの周囲でも決して珍しい話ではないはずです。

※本記事に関連する法令、規則等は改正を伴う場合があり、記事の情報が古くなっている場合があります。最新の改正情報を必ずご確認下さい。

「名ばかり管理職」まとめ

今回ご紹介した事例でも言えますが、「管理職」といっても、その「職務内容」「権限」「待遇」等は会社によって全く異なります。

「前の会社では平社員だったのに、いきなり管理職で採用された!」

大変喜ばしい事ではありますが元人事経験者としてあえて言わせて頂くと、マネジメント経験が全くない人を他所の管理職で採用するというのはよくよくの事です(大変なポテンシャルを感じれば、こうした形で採用する場合ももちろんありますが)。

そして繰り返しますが「名ばかり管理職」は飲食店だけに限った話ではなく、至る所で起きている問題です。

「管理職」という言葉を鵜呑みにせず、その「職務内容」「権限」「待遇」等についてきちんと転職先に入社前に確認して、後から「こんなはずじゃなかった」というのは避けたいですね!

本記事は以上です。最後まで読んで頂きありがとうございました。