元人事経験者です。本記事は「転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール」を読んでのレビュー記事です。

一言でいうと、私自身は非常に参考になりました。本記事では、「転職2.0」を読んでみての感想と個人的に印象に残った箇所を少しだけご紹介します。
- 本記事内で使用しているイメージ写真と「転職2.0」は無関係です。
「転職2.0」 はどんな本なのか?

おすすめ度:★★★★☆
「転職2.0」というキャッチーなタイトルですが、決して転職する場合だけに当てはまる話ではありません。
「転職2.0」を通じて「今いる会社で感じている不安の正体は何か?」「自分自身の価値を最大化するためには何が必要か?」を理解したうえで、今後自社内で必要なスキルの幅を広げていくいう方にも非常に役立つキャリア形成本だと思います。
- 今いる会社に色々不満があるが、我慢して残っていれば何となくいい事があるだろうと考えているが、どこかその考え方に不安を感じる方。
- 本当は転職したいが、自信がないので嫌な上司の下で我慢している方。
私が感じた「転職2.0」の良いところは、抽象論にとどまらず「自己のタグ付け」や「タグの掛け合わせが希少性を生み出す」等、現状の問題解決のための具体的な方法論にも触れている事です。
そしてもう一つ、今いる会社で我慢して働き続ける事で、どのようなデメリットがあるのかをはっきり言語化して、得体の知れない不安の原因を明らかにしている点も良いと思いました。
また、「転職2.0」では、転職は手段の一つとしてポジティブに捉えていますが、決してジョブホッパーを推奨しているわけではありません。
以下、簡単に内容のご紹介をしていきます。
転職1.0 VS 転職2.0

「転職2.0」と言われても、本を読んでいない方にはピンと来ないかもしれません。
いわゆる従来の転職スタイルを「転職1.0」とした場合との比較表を引用します。
転職1.0 | 転職2.0 | |
目的 | 1回の転職の成功 (転職=目的) | 自己の市場価値最大化 (転職=手段) |
行動 | 情報収集 | タグ付けと発信 |
考え方 | スキル思考 | ポジション思考 |
価値基準 | 会社で仕事を選ぶ | シナジーで仕事を選ぶ |
人間関係 | 人脈づくり (狭く深く) | ネットワークづくり (ひろくゆるく) |
上記によると、転職2.0では転職はそれ自体が目的ではなく、「自己の市場価値の最大化のための手段」との位置づけです。
伝統的な日本企業も従来型のメンバーシップ型の終身雇用を維持できなくなってきた昨今、誰しもが何度かの転職を経験する時代が既に来ている。
そのために「転職2.0」では、いかにして自己の市場価値を最大化するかが最も重要になって来る。
どういうことか?この辺りの詳しい説明は「転職2.0」を是非ご覧下さい。
次項では、「転職2.0」を読んで私自身が個人的に特に印象に残った部分、上記比較表における「スキル思考⇔ポジション思考」、そして「タグ付けと発信」の2点をピックアップしてご紹介します。
スキル思考【転職1.0】 < ポジション思考【転職2.0】

「英会話やMBAなどの資格取得などのスキルアップを何となく頑張っていればいつかきっと報われる」
このように考える方は少なくないと思います。ところがこれは、「転職2.0」でいうところの「スキル思考=転職1.0」の考え方だそうです。
そもそも、転職に際して、なぜ多くの人がスキル思考に執着しているのかというと、会社でやるべき仕事が不明瞭だからです。総合職とは平たく言えば「どんな仕事でも言われたことはやる」ということ。そこで「能力」とされるのは課題遂行能力、職務遂行能力であり、実態は漠然としています。
引用元:転職2.0 ~日本人のキャリアの新・ルール 村上臣 著 SBクリエイティブ発行
それに対して、目指すポジションを明確にしたうえで、それを目指すために必要なタグとして「〇〇」のスキルを身につける。
その手段として〇〇スキルが身につくところへ転職する、又は必要な勉強をするというのが転職2.0での「ポジション思考」の考え方です。
目指すポジションから逆算して考えるという事ですね。
そういう意味では、当書を通じて私自身もスキル思考の塊だなと感じさせられたのが、自身の英語学習です。
昔お世話になった上司から、「英語は、いざという時に役に立つから勉強しておいた方がいいよ」と言われたのがきっかけで、かれこれ10年ぐらい少しずつ勉強しています。
毎年TOEICも受けて、当ブログでも幾つか記事を書いていますが、特に現在仕事で使っているわけではなく、「何のために英語を勉強しているのか?」と言われると「何となく潰しが効きそうだから・・」としか答えられません。。
私自身は人事系で社労士資格を持っているので、例えば「外資系企業の人事部でC&Bマネージャーを目指したい」という目標を掲げ、そのためにTOEIC900点を目指す(”TOEIC900点”というタグを手にれる)というならば、まさにポジション思考と言えると思います。
著者も言うように「英語のタグはいまだに強い」ようですので。
ただ、現在の私のように、こうした目標もないままやみくもに英語を勉強しても、その努力に見合った望み通りの転職が出来ない可能性もあるという話です。もちろん、趣味又は楽しんで勉強するなら何ら問題ありません。
【転職2.0】自己のタグ付けとタグの掛け合わせ

私が転職2.0を通して一番参考になったのは、この「自己のタグ付け」と「タグの掛け合わせ」です。
自己のタグ付けでは、自分の職務経歴書を見ながら「ポジション」「スキル」「業種」「経験」「コンピテンシー」の5項目に沿って分解し、自分自身の強みや適性を洗い出す作業を行っていきます。
「やりたいことがない」「自分の強みなどわからない」という方でも、当書の巻末付録でタグ分類表がついているので、考える際のヒントになります。
詳しくは「転職2.0」を読んで頂きたいのですが、参考までに私も職務経歴書を分解して自己のタグ付けを行って見ました。
ポジション | スキル | 業種 | 経験 | コンピテンシー |
社会保険労務士 | 社会保険労務士 | メーカー | 給与計算・社会保険 | 情報の整理・分析 |
人事担当 | TOEIC700点 | 士業事務所 | 新卒・中途採用 | リスク管理 |
ブロガー | ライティング | 研修講師 | マルチタスク | |
プレゼンテーション | 成長意欲 | |||
問題解決資料作成 | 初心者への教え方 | |||
自らの転職経験 | 安心して話せる |
コンピテンシーの部分は、以前知人から聞いた自分への評価を思い出しながら織り込みました。「転職2.0」によれば、この他人からの意見というのも気づきを得るうえで非常に重要との事です。
タグを洗い出したら、今度はタグの掛け合わせです。タグを掛け合わせる目的は、先述のとおり転職22.0の目的でもある「自己の市場価値の最大化」です。
当書では、「いそうでいない人材だけど、多くの企業がほしいと思う人になる」ためには、現在持っているタグに加えて、新しいタグを掛け合わせる事で、「いそうでいない人材だけど、多くの企業がほしいと思う人になる」との事です。
私の場合で考えると、社労士といっても社会保険の実務や給与計算ができる方は世の中山ほどいるわけで、それだけを武器に今から独立開業を画策しても、レッドオーシャンに飛び込むようなものと私は考えています。
そこに少しでも希少性を見出すならば、企業での教育研修担当の経験も活かしつつ、固有のコンピテンシーにも着眼し、これらを縦に掛け合わせることで、
「社労士」✕「研修講師」✕「初心者向けの説明が上手」=>資格予備校の社労士講師
これで少しはライバルが減るかもしれませんが、それでもまだライバルは多いので、求めるポジションとして近年流行の「オンライン」という新しいタグを追加したら、オンラインの資格予備校の社労士講師とかちょっと面白いかもしれません。
ただ実際のところ、私はこれとは全く違う掛け合わせを現在考え中です。
とにかく、ある程度タグが出来上がったらば、市場に貴方を認知してもらうために、今度はタグをSNS等で発信していく事が大切です。
転職2.0ではこうした貴方からの情報発信を通じてゆるいネットワークを構築し、ここから転職に結び付けるといった事も重要な手法との事です。
当書では著者が自らの経歴に沿ってわかりやすくタグの活用法について述べていますので、是非そちらも参考にして、皆さんもやってみて下さい。面白いですよ!
おわりに

最後に個人的感想ですが、「転職2.0」を読んでいると、結局ITと掛け合わせた方が成功イメージが湧くかなぁというのを実感しますね。。
最近成功しているビジネスもマッチング系とか、”何か”とITを掛けているのが多いですよね(もちろん、ITに限らずアイディア次第だとは思いますが)。
タグを洗い出すことは、まず必要な第一歩ですが、そこからオンリーワンの掛け合わせを探し出すのは、決して簡単ではないですね。
他人に自分の意見をぶつけてみたり、目標を決めて取り組んでいる過程での巡り合わせだったり。色々な要素が絡んだ結果、真の答えが見えてくるような気もしました。
あと、タグ付けのために職務経験の棚卸をしていると、「確かに自分の強みではあるが、今後やりたいとは思えない経験」(サンクコスト=埋没費用)というのも出てきます。
いくら成功する可能性があるといっても、それでは「我慢して働き続ける」事になり、本末転倒です。「やりたい」「ワクワクする」というのを一番に据えて考えるのがやはり一番かなと思いました。
本記事は以上です。
感想は人それぞれ異なると思います。他のブックレビューなども参考にして頂きつつ、興味が湧けば是非「転職2.0」を読んで見て下さい!
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