転職を考える際、「転職先に何を求めるか?」
- 必要十分な待遇
- 働きがいや成長
- 良好な人間関係
これは人それぞれですが、この転職先に求めるものが何かによって「大手企業から中小企業に転職する」という選択をする方もいます。
筆者もこれまで何度か転職を経験し、大手上場企業、中小オーナー企業、外資系企業と色々なタイプの組織風土を持つ企業で正社員として働きました。
本記事ではそうした経験も踏まえて、大手企業から中小企業に転職を考えているチャレンジ精神がある方向けに、知っておいて欲しい大手企業と中小企業の違いを5つピックアップしてお伝えします。
- 裁量とスピード感の違い
- 人材育成面の違い
- 人事制度の違い:終身雇用と成果主義
- オーナー企業あるある
- コンプライアンス面の環境整備の違い
なお、本記事は分量が多めなので、「前編」「後編」の2部構成にしております。
前編では、上記のうち「1.裁量とスピード感の違い」「2.人材育成面の違い」を扱い、後編で残りの3~5までを取り上げます。
それでは本題に入ります。
裁量とスピード感の違い

まずは、大手企業と中小企業では個々の業務のカバー範囲に違いがあるという点からお伝えします。
当たり前ですが大手企業は中小企業よりも社員数も多く、一つの部署に在籍する社員も多いです。
人事部門を例にしますが、中小企業であれば人事・総務業務を極端な話1人の社員でカバーしているというケースも珍しくありません。
一方大企業では、人事部と総務部は別部門であるのはもちろん、人事部の中でも採用担当チーム、教育担当チーム、労務担当チームといった形で分かれています。
そしてそれぞれのチームに複数の社員がいて、採用担当チームの中でもさらに新卒採用担当、中途採用担当といった具合に分かれています。結果として個々の業務範囲は必然的に狭くなりがちです。
キャリア的な側面で言えば、大手企業が「狭い担当範囲を掘り下げる」のに対して、中小企業は「広く浅くカバーする」というイメージになります。
そしてこの違いが採用時のマッチングの問題を生じる場合があります。
大手企業では自分の担当範囲に精通する一方、それ以外の事はやったことがないというケースもある一方、
中小企業に転職を考えた時に、「幅広く色々経験している人の方がベター」という場合もあり、思った以上に転職に苦労する場合もあります。
したがって、中小企業に転職する場合には「自分の担当業務以外の事は知りません」という意識よりは、「未経験分野も積極的に学びます!」という意識で臨んだ方が良いでしょう。
そして中小企業では「幅広い業務をカバーする」必要があり、ある面で「裁量がある」と言えますが、その分「忙しい」「自分の代わりが誰もおらず休みが取りづらい」といった側面もあることを知っておくべきでしょう。
もう一つ、スピード感の違いを挙げておきます。
これも組織によって違いがあり一概には言えないという前提付きですが、大手企業では組織が大きい分、何かを決定する際に複数人の稟議決裁が必要となり、結果的に動きが遅くなりがちです。
私も新卒間もないころ大手企業にいた際、「稟議書の文書が分かりづらい」と言われて何度も書き直しさせられたことがあります。
口には出さないものの、「この僅かの表現の差にどれだけの意味があるのかな・・」と思いながら直したのを覚えています。
一方、中小企業は社長がGOサインを出せばすぐにスタートという場合も多いです。何かを企画提案すると「OK、すぐにやって。後で稟議書一応挙げておいてね。」という感じです。
こうした面で中小企業はフットワークが軽いと言えるでしょう。
人材育成面の違い

2つ目は人材育成面における違いです。転職先の教育体制が気になる方は特にご一読頂きたいです。
企業が行う教育研修は、一般的に以下の3つに分類されます。
- OJT
- OFF-JT
- 自己啓発
このうち、本やE-ラーニングでの自己学習に対して会社が費用を補助する「3.自己啓発」は一旦除外すると、OJTとOFF-JTの2つになります。
OJTとOFF-JTの詳細の説明は省きますが、OJT( On the Job Training)は仕事の中で学ぶこと、OFF-JT(Off-the-Job Training)は職場から離れて行う教育です。
通常大手企業ではOJTとOFF-JTの両方、中小企業の場合はOJTがメインになります。つまりOFF-JTの有無が両者の違いになりますが、本項では「なぜそうなるのか?」ついてご説明します。
まず、大手企業がOFF-JTを沢山実施できる要因としては、単純に大手企業の方が教育研修の予算が潤沢であることに加えて、
研修受講者が職場を離れた際にも業務をカバーできる代替人員がいるなど人的リソースにも余裕があるためです。逆に中小企業はその両方が大手よりも手薄になります。
私も以前大手企業の人事部で教育研修担当を4年程経験しましたが、外部の研修会社から講師を招いて研修を企画する場合、日数や内容にもよりますが1回でかなりの費用がかかります。
社員個人が外部研修機関が実施する研修に参加する場合も同様です。
そんな中、私自身も業務に必要と感じて上司に申請すれば、ほぼ自由に様々な外部研修に参加できていました。丸1日オフィスを不在にしていても特に何も言われませんでした(周囲もそうなので)。
大手企業に在籍していた当時、これは「ごく当たり前のこと」でした。
一方、これが中小企業だとどうでしょうか?
外部研修に参加する機会が全くないかと言えば決してそんな事はありません。
業務に必要な知識のアップデートのためや、法改正に即応するためなど、中小企業在籍時にも会社からの要請で何度か外部研修に参加しました。
ただ、両方に在籍経験のある私の認識では、中小企業では直接的な成果に直結するイメージが湧かない社員側から希望した外部研修に自由に参加できるイメージは少ないです。
例えば仮に「コミュニケーション」や「リーダーシップ」「プレゼンテーション」などの一般的な内容、ベーシックなスキルを外部研修で学びたいと申請した場合、
- 費用対効果はどうなのか?
- OJTではできないのか?
などに対する上司への十分な説明&説得が必要になるでしょう。理由は先述の通りです。
しかし、本来企業が行う教育研修の意味を考えればこれは当然の話です。企業は学校ではありません。
ただ、大手企業では本当に研修への参加のハードルが低い企業もあるので、あたかも外部研修への参加を「福利厚生の一環」的に捉えている方にとってこれはちょっとした驚きかもしれません。
一方、OJTは大手・中小の企業規模を問わず行われています。職場で先生役を任命して、その人と一緒に仕事をしながら実践的な知識やスキルを学んでいきます。
先述の通り、中小企業での教育といえば主にOJTになりますが、OJTにも課題があります。
先生役(チューター)と人事部が連携して、定期的に振り返りを行って成長度合いを確認するといった「仕掛け」を入れていかないと、単なる仕事との区別がつかなくなってしまいます。
「いかにOJTを効果的に運用するか?」は企業の教育研修において難しい課題の一つであり、企業規模を問わず各企業の意識と手腕が問われるところです。つまり過度な期待は禁物です。
最後まとめますと、大手企業から中小企業への転職志望者は以下のような意識をもっておくべきでしょう。
- スキルアップを会社任せにしないこと。
- 仕事を通じて成長する意識を持つこと。
前半は以上になります。引き続き後半も是非ご覧ください!